このアルバムはイリーナ・メジューエワによるベーゼンドルファーへのオマージュである。彼女は2017年に日本コンサート・デビュー20周年という记念の年を迎え、様々なピアノを用いた録音をリリースした。これらを聴いて実感するのは、彼女がそれぞれの楽器の音やキャラクターを巧みに引き出しながらも、最终的には彼女自身の音や表现に全て还元させていることで、どの1枚を聴いても彼女の个性が力强く、あるいは繊细に脉打っていることである。
このアルバムの曲目を见ると、1828年にウィーンで创业され、”音楽の都”に集った大作曲家や大ピアニストたちにより育まれてきたベーゼンドルファーの歴史が反映されていることに気付く。プログラムの中心にはリスト作品が3曲配され、その1曲目は先辈作曲家シューベルトの歌曲からの编曲物、3曲目は后辈作曲家ワーグナーの楽剧からの编曲である。3曲のリストの前には、ロマン派の幕开け的な作品であるシューベルトの即兴曲が配され、その前の、このアルバムの1曲目はシューベルトが神のように尊敬し、リストが幼少期にその才能を爱でられたベートーヴェンの《テンペスト》で堂々と开始される。リストの后には、リストの《エステ荘の喷水》から多大な影响を受けたドビュッシーの、やはり水に関係する作品が続き、ラストはメジューエワと同郷の大ピアニスト、作曲家のラフマニノフが、バッハとショパンの前例に则って书いた前奏曲の1曲で闭じられる。
そして演奏からは、西洋音楽史と密接に结びついたベーゼンドルファーの歴史に、自らを重ねるメジューエワの姿が强く感じられる。今回の相模湖交流センターにおけるセッション録音が、SP时代のように一発録りで行われたことも、こうした思いの强さに繋がったのだろう。
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